第2章 対応の話 第1節 認知低下、どう対処したらよいのかの秘訣4項・食事問題への対応
少量で頻回に食べて頂くのも一つの手です
食事での問題は、食欲と食材と調理、摂食行動と嚥下などが主なものとしてあります。
食欲では、出過ぎて頻回に食事を要求される場合があります。食べたことを忘れて、食べさして貰ってないと言われます。この時、今食べたでしょうと説明して納得してもらうようにしますと、感情的になられ自分だけのけ者にされている、と他人に話されて人間関係が崩れることがよくあります。食べ物の恨みは怖いですので、この説得は避けた方が良いと考えます。
高齢者の方では運動も若い人と比べると少なく、活動性も低いので多くのカロリーは要求されることは稀ですので、少量で頻回に食べて頂いた方が問題解決は簡単です。それと、内科疾患を持ってられる方が多く、塩分や糖分制限があって薄味の場合がほとんどです。そして、高齢になりますと舌の味を感じる味蕾(みらい:味の感覚器)も感度が落ちますし、少なくなってきます。
これでは食べた気がしませんので不満もあります。食事量を少なくして同じ調味料の量で濃く味付けしますと、塩分や糖分の摂取量は同じでも美味しく満足に感じられます。これで良いのだと考えます。
他に、食事の容器を食べやすい、馴染みのあるモノにして個性を付けましょう、そうすることで食欲と自分が大切にされていると思われるので嬉しくなって食が進みます。
食事の時に、味や食材について聞いてあげるのも大切で、相手の希望や欲求が分かることは大事です。
この情報で、食べたいもの、調理の方法(煮物が良いのか焼き物が良いのか等々)、食べやすい形態が分かります。また食べる雰囲気や演出も考えましょう。食を通して予防もできますし、体力もつきますし、免疫力もつきます、職はとっても大事です。(食はヒトの天なり。よく味はひを知れる人、大きな徳とすべし。徒然草 122段)
認知機能の低下からくる食事の問題は専門家へ
摂食行動では、認知機能の低下から食材や食べ物であることが分からないようになって、弄ぶことも多く、口へ運んであげても開口せずに抵抗される時もあります。
運動麻痺ではないですが食べる動作を忘れて出来ないことがあり、口に物を入れられないことや咀嚼や嚥下が出来ずに口腔にため込まれることもあります。
嚥下が不良で誤飲が増え咽られることも増え誤嚥性肺炎も心配になります。
また、異食症も出て食べられないモノを口にされ、食べてからつっかえたり、毒性で消化器症状が出たり、腸で詰ったり、消化器を傷つけたりという怖いことになるケースも出てきます。
こういう場合は専門家に相談するのが一番です。
方向性としては、「楽しくいただく」です。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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