第2章 対応の話 第2節 困る症状、どう対処したらよいのかの秘訣2項・移動問題への対応
移動能力が低下してたらスロー生活
認知症では、視空間認知機能障害からオリエンテーションが悪く迷子になられるケースがありますが、これは徘徊で取り上げましたのでここでは止めておきます。
認知症高齢者では筋力の問題や心肺機能の問題から、移動能力の低下が目立ってきます。フレイル(虚弱)やサルコペニア(筋減弱)と言われる問題です。頭ではまだまだ若いと思って身体を動かそうとされますが、筋力や体力の衰えは確実でその差が事故を生みます。
筋自体では、筋線維の損傷や断裂で激しい痛みを生じますし、収縮能力が一気に低下します。このためたちまち運動困難、歩行困難が現れ起居移動不能で車椅子生活やベッド上生活になります。
日頃から「ゆっくり生きましょう」を口癖にして、スロー生活を実践するようにすると良いです。意外と、筋力低下や耐久性低下があり、素直に受け入れて下さることが多いです。
転倒に繋がるモノを片付けましょう
筋力低下から歩行や立位が不安定になり、些細な事で転倒されます。また座ろうとして支えきれずにドーンと尻餅をつくような腰の降ろし方で、骨盤骨折や脊椎骨迫骨折をみて起居困難、歩行困難となります。見ていて危なっかしくても本人はお構いなしに移動や運動されますので、目が離せません。しかし、かといって「動かないで」は無理な相談です。
毎日、一緒に歩いて筋力維持に努める方法もあります。だが、心肺機能や食事の状態も影響するので注意を要します。良いのは、転倒しても良いような環境での運動です、そうですプールで水中ウオーキングをお薦めします。この頃は、高齢者の方が水中ウオーキングされ、一度参加されれば、また行こうとリピーターになられます。これで筋力維持と心肺機能維持が出来ます。
家の中では、転倒に繋がるモノを片付け、手すりを付けられるのも大事です。
転倒を気になされた場合、座れる籠付きの手押し車が便利です。この頃は車の材料が良くなり、座って休める荷物入れの籠も丈夫になりブレーキもシッカリして優れた手押し車が販売されていますので、これも良いと思います。
食事も大切で、たんぱく質の摂取をしましょう。野菜料理と一緒にバランスよく頂きましょう。蛋白のみはいけません。
方向としては「プールと手押し車」です
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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