第4章 環境の話 第1節 家庭環境3項・家庭での誘導方法
仕舞う場所を注意深く観察する
認知症の方は、物の置き忘れや仕舞い忘れが大変よくあります。仕舞うときは、「これは、ここに、しっかり覚えておけば、大丈夫」と思って仕舞われたり、置かれたりしますが、これがイツモノ所でないことが多く、これで分からなくなってしまいます。引き出しや、箱、戸棚には何を収容するか、字と絵文字でラベルを作って貼っておくのが大事です。これは、大丈夫な家人、介護の重要な役目です。
本人の隠しそうな場所をわざと作っておいて、そこに引き出しの多いケースをラベルを貼って用意しておくと、誘導されて其処に仕舞われるようになります。各人の好みを知っておくことが大事となりますので、普段あちこちの引き出しや、戸棚、箱にどういうものを仕舞うか、部屋のどのあたりに置いてあるケースに隠すか、注意して観察しておくとこの誘導方法が活用できます。
部屋の移動は簡単・容易に
家屋の中の移動に関して、認知症が始まるとついつい見当違いをしてしまいます。その結果、身体のあちこちをぶつけたり、物を壊したりなども接触事故が増えます。
見えているのに、距離感が違って衝突したり、引っかかったりしてしまう。これが目につきますと、年かな?から認知症も考えなくてはなりません。まして認知症になられると、部屋を間違え、トイレを間違えでビックリする事態が出現します。長年親しんできたからこそ、見過ごして失敗に陥る事態を招いてしまいます。これが怪我や、物品破損で済めばラッキーです。大怪我や火災など重大なことになれば、後悔しても取り返しがつきません。ですから、部屋の移動は簡単に、容易くできるようにすることです、そのために段差を解消し、戸はスムーズに開閉でき、開閉の度に鈴でも鳴るようにし、絨毯や畳の上敷きで足を引っ掛けて転ばないように端っこは押さえておきます。
夜間のことを想定して、誘導灯を付けるのも良い考えです。トイレの場所が分り易いように戸の前の灯りを明るくしておく、蛍光色の表示をしておくのも必要でしょう。トイレでは、便器のふたは無いほうが直ぐに出来て、失敗を減らせるでしょう。ゴミ箱は大きめのモノを用意し、トイレットペーパーはこまめにチェックして取り替えておくようにしましょう。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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