第6章 「認知症」予防の話 第1節 何を予防?原因がはっきりしない中、何を予防するのか?3項・認知症予防のために見直すこと
認知症になる方とならない方の違い
何故年を取ると発症リスクが高くなるのでしょう。これを突っ込んで考えると予防のヒントが出て来そうです。認知症へと進む何か悪いことを、しているに違いありません。高齢になっても、認知症にならない人も大勢いらっしゃいます。その方々と認知症になる方と、どういう違いが人生の過ごし方にあるのでしょうか。
このことに関して、多くのレポートが出ています。
食事を見直す
食事では、以前に書きました様に糖質の取り過ぎは危険であること、これを長年続けていると認知症発症のリスクは当然高くなります。ビタミンではB群ビタミンやビタミンDの低下がリスクを高めます。従って、こうした多過ぎたり、不足したりがリスクを高めるため、食事で注意をして過不足を解消することが、認知症リスクの低下となり認知症予防となります。
悪質な睡眠の継続によるリスク
睡眠では、脳の神経細胞を修復させる時間でもあります、新しい脳細胞が産生されるのを促します、また成長ホルモンは睡眠中に増加します。
そのため、睡眠時間の減少は認知症へのリスクを高めるので、睡眠不足を長年続けるとリスクはかなり高いと言えます。
睡眠は、一日で必要な時間を取れば大丈夫と言うわけにはいきません。眠るべき時間に眠らないと睡眠中のホルモンが出て来ませんし、連続睡眠で睡眠の深い相を経てレム睡眠、ノンレム睡眠を繰り返すリズムを造ることで本来の働きがなされるため、短い睡眠を繰り返したり、日中の時間帯に寝て、夜間に活動する昼夜逆転などでは、日照と関わるホルモンの産生リズムが壊れてしまいます。
長年にわたる悪質な睡眠は睡眠の大事な機能を失わせて、認知症への道を歩むことになります。
適度な運動と睡眠
運動は、活動や行動範囲を左右するものです。運動が低下すると、両者ともに低下して孤立や孤独が膨らみ、生活全体を委縮させて認知症リスクを高めます。
また筋力低下が進みたちまち転倒骨折の危険度が大きくなり、更に動かなくなる負のスパイラルにはまり込んでしまいます。
年を経るごとに運動量の低下は睡眠にも影響し、睡眠が不足するように生活リズムが変化します。
快適な睡眠のための住環境
住環境では、湿度の高い、喚起の悪い状況だとカビや細菌繁殖など衛生環境の悪化が出て来ます。
これらにさらされると認知症へのリスクが高くなります。住宅周囲の交通事情で外出が難しい、騒音で夜間睡眠が不十分のようですと、運動や活動量が減るため先に述べたように認知症へのリスクが大きくなります。
幾年も危険な住環境にさらされると高齢になった時は、認知症の下地が十分出来ていることになります。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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