第2章 対応の話 第1節 認知低下、どう対処したらよいのかの秘訣2項・幻覚、妄想への対応への対応
幻覚や幻聴も否定をせずに聞いてあげる
幻覚について、怒りや興奮と同じに共感の意を示しながら、話を聞いてあげることです。
途中で話の間違いや思い込みに気がついても指摘をしないで、終わりまで聞きましょう。
幻覚と妄想の内容について、どのようなことなのかを聞き取ることで、対応が色々と異なります。
幻聴は、人の声もありますし、音楽のこともあります。またお経の時もあります。人の声も様々で、知らない人、知っている人、友達や家族のこともあります。
聞こえてくる話の内容を聞いて、本人がどのような気持ちを抱いてられるのか、さみしい気がしたのか、怖い気がしたのか等を知ることが役に立ちます。
その時の気持ちを汲取ってあげることが、大変有効な対応となります。それで何かを行動するというよりも、気持ちをわかってあげて、それに共感を示して味方になってくれることが、本人への意味のある対応となります。
妄想も否定せず、感情を共有して安心してもらう
妄想も同じことが言えます。妄想は思い込みと違って訂正不能な信念ですから、間違っていることを正すことはできません、そのことを目指すと、関係性はどんどん悪くなり感情的なしこりが深まるばかりです。従って、行ったのは引いて相手の言うことを受け入れて、関係性構築を図ることに努めます。その関係性が出来た時点で、妄想の中身を相手としっかり確認しながら尋ねていって、何をどういうように感じ、考えておられるのかを理解します。
聞き終わって理解できるまで、間違っても訂正したり合点がいかないなどと口走ってはいけません。
相手の考えや感情を理解しようとする立場を、決して忘れない様に十分意識してください。その中で分かった感情的なことについて、共感して励ましたり、慰めたり、怒ってあげたりして感情を共有します。
そういうことがあっても、味方だから安心するようにと孤独でないことを積極的に伝えましょう。
安心感が出来ると、妄想の中身が変化するようになることがあり、中身は変わらなくても小さく弱くなることがあります。これで、良いのです。
方向としましては「安心感を持っていただく」です。
そうすれば、怒ったり、興奮したり、拒否したり、ブチ切れたりは減少、縮小します。このことで、介護や支援がどれほどやり易くなるか、効果は大きいです。完璧を目指すと、関係性に綻びが出ます。
希望が欲望に変わり、相手は圧迫や強制という匂いに敏感に反応されますので注意です。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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